Nucleoに学ぶプリント基板設計①-配線編-
こんにちは.まんぼーです.
皆さんStay Homeしていますか?
個人的にですが,研究室に行けなくなり,やろうとしていた実験を当面しなくて良くなったので できなくなったので,色々な面で(※金以外)余裕ができました.
コロナのせいで収入が激減した反面,コロナ禍がなかったら触れていなかったであろうこと(長年放置してきたギターやC++の勉強など)に手が出せるようになりました.なんやかんやで時間が経つのは早いので,有意義に過ごしたいです.
はじめに
さて,この記事を読んでいる皆さん.Nucleoは持っていますか?持っている方,「こっちが本体!!!」とか言ってデバッガだけ切り取って,下側を捨てたりしていませんか?
プリント基板の回路設計をしながら色々勉強していくと,「これ…どうすればいいんだ?」みたいなことが良く出てくると思います.そんな時にNucleoがあると学べることがあるはずです(その前にググれというツッコミは全面的に受け付けます).
超大手の会社が作るプリント基板ですから,私みたいな回路初心者よりも,それなりの技術が詰まっているはずです(と信じたい).Nucleoを見て回路設計について学べることを学んでいきましょう!(※完全に入門編です.所詮は開発ボードなので,あまり深くは学べないです)
Nucleoについての細かな説明は割愛しますので,他のブログ等をあたってください.
Nucleoで学ぶプリント基板設計
今回はよく配られている秋月で売られているNucleo F401REをじっくり見ていきます.
(私の持っているNucleo F411RE, L476RGはすべてパターンが同じでした(多分).もしかしたら変わっているかもしれないですがご了承ください.)
Nucleoはレジストが白なので目立たないです.図もとても見にくいですが,ご了承ください.
1.信号ラインは直角配線を避ける
まず,パターンの曲がり角を見てみましょう.
どのパターンも45°に折れていることがわかります.
プリント基板の設計では,基本的に直角配線は嫌われます.
これは,曲がり角で特性インピーダンスが変化し,ノイズが発生しやすくなるためです.インピーダンスが変化するのは,直角にしてしまうと直角部分だけ他の部分よりも極端にパターン幅が大きくなるからです.
この特性インピーダンスの変化をできるだけ抑えるため,45°に2回曲げることによって配線の方向を90°変えることが多いです.
また,本当にノイズを発生させたくない場合は,弧を描くように配線すると良いです.
2.基板外周にGNDビアを打ち,GNDベタで囲う
続いてNucleoの外周をよく見てみましょう.等間隔に点が打ってありませんか?
これは「ビア」といい,基板の表と裏を電気的に繋いでいます.これは何のためにあるのでしょうか.
理論上の回路ではノイズは回路内でしか発生しないはずですが,プリント基板は外部からのノイズも受けます.同様に,外部にノイズを放出することもあります.これらを防ぐために,基板の外周をGNDで囲う必要があります.
Nucleoにも打ってあるように,外周に等間隔でGNDビアを打ち,ベタにしてあげるとノイズ源となることを防げます.
等間隔!ってどのくらいだよ!と思った皆さん.Nucleoの出番ですよ.
Nucleoの外周ビアの間隔を測ってみると,5[mm]間隔で打ってあります.回路の規模にもよりそうですが... マイクロマウスを作るときの参考にしています(これが言いたいがためにこの記事を作ったまである).
ベタGNDって何?という人はこちらの記事がわかりやすいです.
http://www.noise-counterplan.com/article/15136099.html
両面基板のベタGNDについてはこちら
https://www.noise-counterplan.com/article/15165055.html
3.細長いGNDベタにはビアを打つ/カットする
表面のR32の左側やデバッガの下側を見ると,下図のようにベタが細長くなっている箇所があります.そして,この細長いベタの先端や真ん中にはビアが入っています.
GNDベタは大きいほどいいという訳ではなく,細長いベタはノイズ源にもなり得ます.
そのため,細長いベタにビアを入れてあげるか,表に配線があったり細長すぎてビアを入れられない場合は,細長い箇所をカットしてあげましょう.
図の①ではかなり細いベタが入っていますが,これほど細くしてでも入れているのは,2番で説明した「外周はGNDベタにする」を強く意識しているのではないかなと思います.
※ちなみによくみると裏面にこんな箇所もありますね…大して重要じゃない箇所なのかな…ここら辺はよくわかんないです.
4.GNDビアは適切な量にする
ベタGNDを増やそうとすると,GND線が通っていないスペースにビアを打っていくことになります.このビアは多ければ多いほど良いわけではなく,多すぎると電気特性が劣化していきます.Nucleoは多層基板だと思うので限りなく少ないですが,信号線を挟むようにしてGNDビアを入れているように見えます.これはパターンから他のパターンに信号が漏れないようにするためです(漏れることをクロストークと言います).
※GNDビアはノイズ対策の色々な目的で使用するため,必ずしも少なければ良いとは限りません.詳しくはこちら.
https://www.atmarkele.com/articles/89
※電源配線で表裏の行き来をさせたい場合は,こちらを参照にしてください.
1A流れる想定では,Φ0.5のビアを3個空ければ良いそうです.(ちなみに電源線の太さは0.1Aあたり0.1[mm]です.)
https://www.noise-counterplan.com/article/14969107.html
5.水晶発振子の下にはパターンを通さない
Nucleoには水晶発振子が2つあり(x1,x2),下側の方にも1つ後付け(x3)ができるようになっています.この部分をよく見てみると,水晶発振子の足から生えているパターン以外,パターンが1本も通っていないですよね.
このように,水晶発振子の下にはパターンを通さないようにするのが定石です.
水晶発振子の下にパターンを通すと,パターンと水晶発振子の間にクロストークが発生します.
まとめ
Nucleoを舐めまわすように見てきましたが,いかがでしたでしょうか.実際のプリント基板では様々な場所でノイズが発生します.何も考えずに設計をしても上手くいくこともありますが,回路は絶対に合っているのに挙動がおかしい…(マイコンの動作が不安定だったり),という場合はノイズが原因であることも多いです.
オシロスコープを使用すればノイズの発生源は大体特定できますが,家にオシロスコープがある人もあまり多くないでしょう.ノイズに苦しみたくないなら,最初からノイズ対策を施したプリント基板設計をすべきです.
次回はIC周辺について触れたいと思います.